中学生の勉強

数学では定義と定理の違いを理解することが重要

中学生の数学の図形の分野の学習で、定義ということばや定理ということばが初めて出てきます。この定義と定理の違いは、中学生にとっては分かりにくいことがらの1つかと思います。また、定義と定理とは何かという問いは、中学校の定期テストでは出題されることがありますが、実力テストや高校入試では出題されません。なので、定義と定理の違いについて、あいまいなまま高校の数学に入っていく人も多いでしょう。

けれども、定義と定理の違いを明確にしておかなければ、高校の数学でつまずくことになります。高校の数学では、定義や定理は、図形の分野のみならず、指数・対数や指数関数・対数関数・微分・積分・集合などでも登場します。特に定義について、しっかり押さえておかなければこれらの分野が、今ひとつ分からないということになります。

それでは、初めに定義の説明をします。定義の「義」は、漢字としては「意味」という意味を表します。つまり定義とは何らかの意味を定めるということです。ネットなどでも定義の説明として、「ことばや用語の意味をはっきりと述べたもの」とか「ことばや用語が、どういった意味内容で使うのかを決めたもの」とあります。たとえば「二等辺三角形」の定義ですと「2辺の長さが等しい三角形」となります。

けれども、定義についてのこの説明は、国語や社会の学習で論文を書くときの定義の説明にも使えるような表現になっており、曖昧さがあります。(国語や社会での論文では、冒頭部分で、論文内で用いるキーワードや重要用語の意味を「この論文の中ではこの定義をこういう意味とします」というように定め、宣言することが多いです。)

数学での定義というのは、約束事とかルールとかで理解した方が良いでしょう。たとえば、図形の分野の学習であれば、定義として「二辺の長さが等しい三角形を二等辺三角形とする」という約束事、ルールを最初に決めるのです。そして、このルールのもとで二等辺三角形のいろいろな性質を考えるのです。平行四辺形の場合も考えてみましょう。平行四辺形の定義は「2組の対辺が平行な四角形」です。これは平行四辺形ということばの意味でもあります。そして、約束事、ルールでもあります。2組の対辺が等しい四角形が平行四辺形であるというルールのもとで、平行四辺形のいろいろな性質を考えましょうということになります。ルールを守りつつ性質を考えると「2組の対辺がそれぞれ等しい」「2つの対角線の交点がそれぞれの対角線を2等分する」「1組の対辺が平行かつ等しい」「2組の対角がそれぞれ等しい」という性質が浮かび上がってきます。

また、定義というのは図形だけではありません。比例、反比例、一次関数、二次関数をまとめた「関数」というのもまた、定義が用意されています。関数の定義は、「変数x,yがあって,xの値を定めるとそれに対応したyがただ一つに定まるもの」となります。定義というのは、決めごとやルールですから、この定義は正しいとか正しくないとかの議論はしません。定義というのはただ、それを受け入れるだけのものなのです。これは、スポーツ競技やゲームなどのルールと似ています。たとえばテニスの得点は、ラブ(0)、15、30、40、ゲームと数えます。競技者が「この数え方は分かりにくいから1,2,3、4の得点の数え方にしてくれ」と言ってもだめです。テニスのルールとしてそう定められているのです。

数学も二等辺三角形の定義や平行四辺形の定義ですと、ことばの意味が定義ということで理解できますが、数学の内容が高度になっていくと、定義をルールとして理解し、定義は疑いようのないものとして考えたほうがよくなります。

次に定理について述べます。定理は、定義を定めたとき浮かび上がってくる性質です。二等辺三角形ならば「二辺が等しい三角形が二等辺三角形である」という定義を定めたとき、「二等辺三角形の2つの角は等しい」という性質が浮かびあがってきます。これが定理です。定理(性質)は、それが正しいかどうかを証明する必要があります。十分に疑ってよいものです。そして、証明の仕方は、定義を用いて行います。それが正しいかどうかを疑ってはいけない定義というものを用いて、それが正しいかどうかを疑ってかかるべき定理(性質)を証明するということになります。

平行四辺形ならば、2組の対辺が平行であるというただ1つの定義を用いて、「2組の対辺が等しい」「1組の対辺が平行かつ等しい」といった定理(性質)を証明するわけです。

※念のために言っておくと「二等辺三角形の2つの角は等しい」というのは定義ではありません。二等辺三角形のことばの意味を直接表したものではありません。もしも直接表したら、二角三角形という用語になります。もちろんそういった用語は一般的にはありません。また、二等辺三角形を考えるさいのルールでもありません。2つの辺が等しい三角形というルールのもとで、2つの角が等しいという性質が浮かび上がるのです。ですから定理となります。