家庭力

勉強が大切なものだと親自身が思っていないから子供は勉強をしない

「子どもが全然勉強をしないで困る」「どうすれば子どもが勉強をするようになるのだろうか」―― こういった悩みを抱えている親御さん達は多いでしょう。

「どうすれば子どもが勉強をするようになるのか」―― この問いに対する答えは、「どのような子どもが勉強しないのか」を考えると見つけやすくなると思います。

では、どのような子どもが勉強をしないのでしょうか?
私が、学習塾でさまざまな生徒を教え、親御さんや子ども本人との面談をやってきた経験からいえば、最も明確な答えは、
「親御さんが、勉強に対して価値を認めておらず、勉強を大切なものと考えていないと、子どもは勉強をしない」というものです。

これに対して反論はあると思います。「勉強に価値を認め、勉強が大切と思っているから、塾にも通わせているし、大学への進学も望んでいるのだ」と異を唱えるでしょう。

けれども、その反対意見は勉強の価値を認めてのものでしょうか?「将来、お金に困らない経済的に安定した生活を送って欲しいから勉強をしてほしい」ということなのではないでしょうか?

それは勉強そものへの価値ではありませんよね。お金を稼ぐ手段としての勉強です。勉強よりもお金が稼げるものがあれば、そちらでもいいわけです。プロのスポーツ選手でもいいし、漫画家でもいいし、youtuberでもいいし、ゲームクリエイターでもいい。勉強に価値を認めているというよりは、お金に価値を認めているのです。

確かに、勉強は将来の暮らしに備えて行うものです。裕福な生活を送るために有名大学に進学する、そして有名大学に進学するために勉強する、ほぼほぼ全員がこの考えのもとで勉強をします。

けれども、これだけでは足りないのです。これだけでは子どもは勉強をしません。子どもは自分の将来が、経済的なゆとりを欠いたものになるかもしれないという不安など中々もちません。遊んでいても、勉強をしなくても、それなりに豊かな暮らしが過ごせると思っています。子どもは自分の将来を楽観視するものですから。

勉強がお金を稼ぐ手段であると同時に、勉強それ自体にも価値があることを、親が心から思うことが重要なのです。親自身が勉強を価値あるものと思い、勉強を大切にすれば、子どもも同じ考えを持つようになります。

では、勉強それ自体に価値があると思う親と、勉強それ自体には価値がないと思う親との違いは何でしょうか?

それは、親自身が何かしらの「学び」を行っているかどうかということです。その学びは単なる読書で十分です。健康な体づくりをテーマとした本でもいいですし、経済についてのハウツー本でもいいです。学び直す中学英語でもかまいません。るるぶなどの旅行本でもかまいません。親自身が、自分の興味のあることがらを掘り下げてよく調べ、得られた情報や知識をノートなどによく整理し、知識や情報を「身体化」していくという作業をすればいいいのです。

子どももまた、学校の勉強をたいしてやらず、自分の好きなジャンルを堀り下げたとしてもそれで構いません。ある意味、そちらのほうが強みです。今の時代は、自分が得意な知的ジャンルを1つ作った方が大学入試や就職の武器になります。大学入試はAO入試や推薦入試もありますし。また、好きなジャンルを掘り下げて自主的に学ぶことによって、学習方法を身につけ、学校の勉強の成績もあがっていきます。

親が、何かしらの「学び」で特に興味のあるものがない場合は、子どもと同じ学校の勉強でもかまいません。理科でも社会でも構いません。そして、子どもよりも学習内容の理解が劣っていても構いません。子どもは親に親切に教えることによって、学ぶことと人に教えることの楽しさを知るでしょう。

親は、自身が勉強しなければならない状況に追い込まれているわけでもないのに、自主的に勉強している姿を子どもが見たら、子どもは「自分も勉強しなければならない、勉強にはそれだけの価値があるのだ」と思うようになるでしょう。

また、勉強それ自体に価値があることは、子どもを図書館や博物館やキッザニアなどに連れて行くことでも示すことができます。

ほかに、これが最も大切なことですが、試験の成績が悪い場合でも叱らないことです。勉強をしないのは大いに叱って構いませんし、ゲームやスマホを制限するのは是非行うべきですが、試験の成績では叱ってはいけません。勉強それ自体に真剣に取り組んでいれば、それで構いません。勉強それ自体に価値があると思って、一生懸命勉強した場合、そこで評価されるのは勉強に取り組む真剣さであって、試験の結果ではないからです。