小学生の勉強

精読と多読による小学生の国語の読解力の鍛え方

小学生が国語の読解力を鍛えるためには、精読と多読の両方を行うことが必要です。小学生は、英語の学習もまだ本格的ではなく、理科や社会の学習内容も、まだ量が少ない段階なので国語に十分な時間を充てることができます。国語の学習に充てる時間が十分にある小学校時代に、大学受験でも使える国語の解法を身につけることが重要です。
国語の問題は、中学受験と大学受験で違いはありません。文章を正確に読み取り、問題を解くだけです。記述問題も、中学入試と大学入試の記述問題は同じ解法でこなすことができます。
中学受験をしないお子様の場合は、すべての教科の基本である国語を得意科目となるように努力しましょう。中学受験をしないならば、国語を主として取り組んでも良いほどです。

精読と多読

精読は、小学校の教科書、国語の長文問題の文章、ジュニア向けの学術的な本を素材として行います。
多読は、一冊の本を素材にして行います。本は物語、ジュニア向けの本など何でも良いです。文章を読むのが苦手な子は、小学生だとまだ社会的心理が成長していない段階にある場合も考えられます。社会や集団と自分の関係を意識せず、自分を客体化してとらえる社会的視野をまだ獲得していないでいるわけです。精神的に幼いという状況です。男の子に国語が苦手な子が多いのは、女の子よりも心の発育が遅いからです。そういった場合は、無理に精読せず、活字慣れと本を読む技術を少しずつ高めていくために易しめの本を多読することを勧めます。

小学生が国語の多読で読む本

小学生が多読で読む本は以下のものを勧めます。非受験の小学生、あるいは中学受験をする子でも読書が苦手な小学生は、以下の作品から読み始めるとよいです。

多読の物語・小説

宮澤賢治…童話全般。短編集なので読書が苦手な子にもお勧めです。
上橋菜穂子…Eテレビで放映されたアニメ『獣の奏者エリン』の原作者です。他には『守り人』シリーズが著名。
柏葉幸子…『霧のむこうのふしぎな町』が特に素晴らしいです。
岡田淳…テンポの良いストーリー性に富んだ作品が数多くあります。『びりっかすの神さま』が面白い。
椋鳩十(むくはとじゅう)…月の輪グマや野鳥といった野生動物についての作品が多いです。
梨木香歩…『西の魔女が死んだ』は男の子にも女の子にもおすすめ。
重松清…小中学生を主人公にしたたくさんの小説を書いています。子ども特有の繊細な心の動きを描くのが天才的に上手い。心情の読み取りが得意になりたい人は、特にお勧め。
他に、「講談社 青い鳥文庫」や「偕成社」「岩波少年文庫」「福音館書店」「ポプラ社」に良質な児童文学作品があります。また、海外の児童小説や児童物語もお勧めです。『クリスマスキャロル』『ガリバー旅行記』『モモ』『レ・ミゼラブル』『シャーロックホームズ』などなど古典的名作がたくさんあります。 

多読の説明文・論説文・評論文

多読用に、難度が低く、読みやすいものを紹介します。けれども、難しい場合は、精読に切り替えて丁寧に読んでください。
中村圭子…東京大学の理学博士であり、生命科学に関する著作を意欲的に行っています。小中学生河合雅雄…世界的に著名な霊長類学者です。京都大学の名誉教授。 サルや動物に関する著作が多数あります。児童向けのものも多い。大学入試でもよく出題される河合隼雄はこの方の弟です。兄弟そろってすごいです。
『アラスカ 光と風』 (福音館日曜日文庫)…雄大な自然やそこに生きる野生の動物を撮影するカメラマン、星野道夫さんの本です。
『いのちのバトン』(日野原重明)…100歳を超えてもまだ、現役の医者である日野原重明さんの本です。たくさんの命と関わりながら、人生を長く生きてこられた氏の言葉は心に強く響きます。
たくさんのふしぎ傑作集(福音館書店)…小学3年生?小学6年生を対象とした自然科学系の児童書本です。絵や写真が豊富に入っているので、説明的文章の入門書として最適です。
光村ライブラリ(光村図書図書出版)…教科書会社の光村の本です。昭和46年から平成12年までの小学校の国語教科書から先生や子どもたちに高い支持を得た作品を収めています。 全18巻で、小学校高学年のものは12巻から17巻の全6巻です。説明文以外に、児童小説などもあり、全編を読み味わいたいです。

小学生が国語の精読で読む本

物語・小説

重松清…読書が苦手な小学生の多読本としても勧めましたが、精読としてもお勧めします。国語の中学入試問題の素材文として、ここ数年、作者別ランキングで1位です。それだけ、作品世界に深みがあり、人物の描写が生き生きしているといえます。
椰月美智子…中学入試問題の作者別ランキングの2位が椰月美智子さん。私は『しずかな日々』が面白かったです。小学5年生の地味で冴えない男の子が主人公。 友達とのつきあいを通じて、心と精神が大人になっていく様子がよく描けています。社会性が低くまだまだ幼いなあという男の子に、ぜひ読んでほしいです。この本をきっかけにして 日常での物の見方が大人になり、国語力も伸びます。
小川洋子…『博士の愛した公式』が有名です。算数が好きな子なら『博士の愛した公式』は好きになれそうです。
あさのあつこ…野球が好きな子なら『バッテリー』。陸上が好きなら『一瞬の風になれ』。どちらも長編です。 長編小説を読むことは大切です。思考の持続力が高まります。あさのあつこさんは短編小説も多く書いていて、そちらもお勧め。
長野まゆみ…『野川』から多く出題されています。
他にも、梨木香歩さん、佐藤多佳子さん、関口尚さん、瀬尾まいこさん、魚住直子さん、まはら三桃さんがお勧めです。 梨木香歩さんの作品は多読にも精読にもお薦めです。

説明文・論説文・評論文

外山滋比古…高校入試や大学入試でも外山滋比古さんの著作物は、とてもよく出題されます。中学入試でも説明文・論説文・評論文の分野で、作者別の 出題ランキングが1位です。
それと、氏の『思考の整理学』は東大生・京大生に最もよく読まれた本として挙げられています。 難意な語句を使わず、平易に書かれているので小学6年生でも読んで理解することが十分にできます。読解力が身に付くだけでなく内容においても思考力が鍛えられる本がたくさん あるのでいろいろ読んでください。
齋藤孝…テレビ番組のコメンテーターとしても活躍されています。中学入試の説明文・論説文・評論文の分野では、作者別の出題ランキング2位です。 賢い子どもに育てるための方法論や、頭がよくなる・成績が上がるための勉強法について書いた本が多くあります。中学受験だけでなく、保護者自身が子育てのためにもぜひ 読んでください。齋藤孝さんは東大出身なのですが、彼の高校時代の勉強への心構えと、彼自身の勉強法はとても役に立ちます。『勉強は量、そしてたくさんの勉強量が質に転化して、 頭は良くなっていく』という考えは素晴らしい。その通りです。中学受験で子どもが伸び悩んでいるなら、ぜひ読んでください。
日高敏隆…中学入試と高校入試でよく出題されます。筆者の考えを述べる論説文というより、さまざまな事柄を分かりやすく例を用いながら説明していく説明文です。自然や昆虫や動物に ついての内容が多いです。説明文は本が少ないので、日高敏隆さんの本は数多く読んでください。
花里孝幸…自然の生態系についての本を多く書いています。中学入試でとてもよく出題されるジャンルなので知識を身につける上でも役に立ちます。
森博嗣…国立大学の工学部助教授であり、小説家でもあるという異色な肩書を持つ人です。ほかに理系出身の小説家で有名なのは東野圭吾さんがいます。 文豪の森鴎外も軍医総監という理系でありながら多くの小説を書いていました。森博嗣さんは小説のほか、論説的文章も何冊か新書で書いています。中学入試でよく出題されています。
池内了…著名な科学者であり、科学についての本も多数書いています。児童向けの分かりやすいものから大人向けのものまで、文章も書き分けていて、どの年代 の人にとっても読みごたえがあります。 中学入試・高校入試でよく出題されます。文章や論理の展開も上手で、自分で作文や小論文を書くときのお手本にもなります。 岩波ジュニア新書…基本的に中学生・高校生が対象ですが、小学生でも読みこなせるものが多数あります。 宇根豊さんの「農は過去と未来をつなぐ??田んぼから考えたこと」は中学入試でよく出題される本です。中学入試では、森林や川、海の自然を守るといった内 容の本がよく出題されます。 農業をテーマとしたこの本も、農業とそれを支える自然の保護について書かれています。
内田樹…教育論についての本が多いです。高校入試や大学入試で特によく出題されます。文章がやや難しいことから、難関中学校で好んで出題されます。
河合隼雄…こちらも高校入試や大学入試での出題が多いです。心理学関連の本を多く書いていますが、児童小説もあります。難関中学でよく取り上げられます。内田樹よりは文章は簡単ですが内容は深く、思索を巡らしつつ読むことが必要です。