小説を読んでも読解力は伸びない
勘違いしている人が多いのですが、国語の文章問題が苦手、読解力が弱いという生徒に対して、小説や物語を読むよう薦める人が時々見受けられます。
活字は見るのも苦手、本を読む習慣がない生徒に、読書を習慣づけようとして、そんなアドバイスをするのでしょうが、さほど意味はありません。
小説が好きな生徒は文章に慣れ親しんでいるため、そこそこの読解力はありますが、小説だけでは、読解力は鍛えられません。
なぜなら国語の読解問題には、小説文以外にも、詩・短歌・俳句・論説文・説明文・随筆文といったジャンルがあるからです。
小説文をよく読み、小説文の読解問題はよく解けても、事実を整理しながら読む説明文や、筆者の論理を追う論説文は苦手という生徒は多くいます。
そもそも、小説が嫌いな人も多くいます。特に男子の生徒は、人の心の動きや感情の変化、事件や出来事の推移に興味がなかったりするものです。そんな子に、小説を読むよう薦めても学習効果は期待できません。
では、国語の読解問題が苦手な生徒や、読解力がそこそこあるけど、小説文以外は今一つだという生徒は何を読んだらいいのでしょう。
それは随筆文です。
読解力を鍛えるために随筆文がなぜ良いのか
随筆文という言い方は、国語という科目内での呼び方です。一般にはエッセイと言った方がわかりやすいかもしれません。
随筆文は、筆に随う(したがう)と読み、筆者が心に浮かんださまざまなことをとりとめもなく、気分のおもむくままに、筆にしたがって自由に書き綴った文章です。
随筆文は筆者の考えや意見、感想を述べたものですが、論説文のような論理の硬さがありません。なので、論説文より読みやすいのです。
また、随筆文には、筆者の感情や思いも綴られていますが、小説文のように、登場人物の心理の変化を味わうといったこともありません。話題は日常生活で誰もが体験するようなことがらです。文章を読んで親しみやすい世界が、随筆文には広がっています。
論説文と小説文の中間的な立ち位置にいるのが随筆文なのです。ですから、小説文をよく読んできた生徒が論説文の読解力を鍛えるためのステップアップとして、また、小説に面白みを感じない生徒が読解力を身につけるための読み物として、それぞれに役立つのが随筆文なのです。
随筆文さえ、読むのが苦手だという人は、勉強だと思って我慢して読んでください。最短で読解力が身につきますから。
どんな随筆文を読めばいいのか
では、随筆文は、どんなものを読めばいいのでしょうか。これも答えはとてもシンプルです。公立高校や私立高校の入試問題で出題された随筆文を読めばいいのです。
入試問題は難しいのではという声が聞こえそうですが、そんなことはありません。古典・論説文・説明文で得点を稼ぐためには中学3年生の読解力が必要ですが、小説文や随筆文はそうではありません。
小説文・随筆文では、国語の基礎的な読解力を試すための文章が選ばれ、設問も国語の苦手な生徒でもある程度、正答できる平易な内容になっています。
ですから随筆文は中学一年生、中学二年生でも読んで内容がわかるものになっているのです。
文章を読むのが苦手な生徒は、それでもすらすら読めるというわけではありませんが、分からない語句は辞書で意味を調べ、重要だと思う部分には線を引きながら、丁寧に読む作業、つまり精読を行ってください。
さらに一言付け加えておきますが、図書館で随筆の本を一冊借りてくる必要はありません。それは、一冊まるまる読んだ方もちろんいいですが、それは読書の楽しみを味わうためのものであって、少ない時間で効果的に読解力を身につけるためには、中学生に合うレベルの文章を選定した入試問題のほうがお薦めです。
長くなってしまいましたが、まとめると、国語の読解力を鍛えるためには、第一段階として、中学一年生、中学二年生、中学三年生の前学年の生徒は、全国公立高校の入試問題や私立高校の随筆文を精読しましょうということです。
大手進学塾は、各学年の初め4月・5月に随筆文をやり、6月に小説文、7月に説明文という流れが多いのはこのためです。
ところで、入試問題は、小説文・論説文・随筆文・説明文の区別を書いていません。なのでどれが随筆文なのか見分けが難しいと思うでしょう。
うまく見分けられない場合は、「 」のついた会話文があれば小説文、漢字が多くて内容が難しいければ説明文あるいは論説文とおおざっぱに区別して構いません。
内容がさほど難しくなく、会話文も入ってないものを丁寧に読み、問題を解けばいいわけです。
高校入試までなら、随筆文の読解問題は、解法の技術はさほど必要ありません。いくつかの文章を精読すれば事足ります。ちなみに大学入試だと、解法の技術が必要になってきます。
随筆文の高校入試問題を解く
随筆文の入試問題を解くにあたって、気をつけることがあります。
文章問題は、読解力を測る以外にも利用されています。それは受験生の書く力、記述能力です。
文章が平易だと、記述問題はその分、難しく作られる傾向があります。
ですから随筆文の記述問題で、解答が書けないからといって気にする必要はありません。読む力と書く力は相関性はありますが、そんなに強い結びつきはありません。書く力が鍛えられなくても、読解力を伸ばすことはできます。
記述問題は、技術やコツがあって、それを身につければ正答が得られます。大学入試では専ら使われていますが、大学入試での書く技術は高校入試でも有用です。
これは書けそうだなと思う記述問題だけ取り組んでみて、これは無理かなというものはとりあえず無視してください。読解力が充分に鍛えられてから記述問題は練習する方が効果が高いです。